草も木も、いのちを輝かせながら伸びていく五月です。
でも、伸びたがっているのは草や木だけではありません。どんなお子さんでも、
仏さまの願いを信じ、仏さまのお心を心として接してくださる方にめぐりあうと、よい
子にならずにおられなくなってきます。
Mちゃんは、一年生の頃から女の子の便所のぞきをする、家の金を持ち出してむだ
づかいする、自分の席にじっとしていることができず、歩きまわってみんなの頭をた
たいてまわる、お掃除の時間になると机をひっくり返す、ゴミを蹴散らして暴れまわる、
末恐ろしいやんちゃ者といわれている子でした。
ところが、仏さまの願いを深く信じているK先生に三年生になったときめぐりあい
ました。これはMちゃんが小学校を卒業してから述懐したことですが、今までであった
ことのない懐かしい方にめぐりあった気がしたというのです。最初の日「明日から
勉強する教室、ピカピカにしようや」と先生がいわれたとき、「先生、ぞうきん貸し
て!」と、思わず叫んでしまったといいます。それをまた先生が喜んでお母さんに手
紙で報告されたのです。お母さんは感激なさり、すぐぞうきんを縫ってあげてくださ
いました。
翌日「先生、きょうは借りんでもお母ちゃんが縫ってくれた!」とぞうきんを広げ
たときMちゃんはびっくりしました。「がんばれ、しっかり、しっかり」と、太い刺
しゅうがしてあったのです。先生も感激して、「はよう校長先生に見てもらってこい」
といいつけてくださいました。やんちゃ者のくせに気の弱いMちゃんです。毎晩、日
本海くらい寝小便をすると自慢しているやんちゃ者につきそわれて見せに来ました。
私も嬉しくて、仲間にとりまかれてぞうきんを広げているMちゃんを写真に写してや
りました。その頃から彼はものすごいがんばりやになりはじめました。
そして、五月、鯉のぼりの下で運動会をやった時には、入学以来、文句ばかりいっ
て走ったことのないMちゃんが、はじめて走りました。成績はビリから数えて二番で
したが、先生は「きょうの一番よりもねうちがある」といって、肩をたたいて励まし
てやってくださいました。こっそり見に来ておられたお母さんは、感激して、運動場
の泰山木(たいさんぼく)の木の下で泣いてしまわれました。そして、こういう中で、
ほんもののがんばりやになっていったMちゃんでした。